コイ

ニシキゴイ

ニシキゴイ(Cyprinus carpio)。埼玉県産の緋秋翠。

色彩のあざやかなコイが、ゆったりと水中で泳ぐさまは、古来から豊かさのシンボルである。これが、本当にあざやかな色をしている。動くたびに鱗が光を受けてキラキラときらめく。光を受ける箇所によって、陰影が体色にグラデーションのかかった波のように、動くたびに頭から尻尾へ光の帯が移動していく。魚は起きている間中、動きを止めることがない。常に流れに沿って、あるいは逆らって主に胸鰭を使って前後に移動する。力強い胸鰭の動きと、尾びれの動作で、あちらを向き、こちらを向き、水の精のように、狭い隙間を潜り抜けて泳ぎ、光を反射して美しい魚である。

コイの尾びれは、力強い。時には、水中に躍り出て絵に書かれたりもする。あるとき本当に水槽から飛び出て床に横たわっていたことがあった。すぐさま救い上げて水に戻してやったのだが、普通の魚であれば空気中で長くは持たない。調べてみると、コイという魚は湿った布で持ち運びできるほど強いのだという。

コイは、コイ目(Cypriniformes)コイ科(Cyprinidae)に属し、触覚器官であるヒゲ(barbel)を持つ。コイには、咽頭歯というのどにある歯を持ち、モノを噛み砕くため硬いものが食べられる。餌をやれば、飲み込んで噛み砕く音が聞こえる。うきぶくろと内耳をつなぐウェーベル氏器官を持ち、うきぶくろに音が反響するようになっており、振動に敏感である。コイは、水質の汚濁に強く、強健な魚である。ただし、冷血動物である魚類は、一般に気温の変化には弱い。コイは日本の国魚である。